「後遺障害って、交通事故ではよく聞く言葉。でも難しい言葉がならんでよくわからない・・・。」そんな声にお応えして、後遺障害について、主任弁護士 小林芳郎がわかりやすく解説します。
高次脳機能障害とは
脳にダメージを受けて、認知機能に障害がおきた状態をいいます。
高次脳機能障害は、脳が損傷することで、感覚機能(視覚や聴覚など)と運動機能(手足を動かすなど)を除いた大脳の機能(認知機能)に障害が残ることをいいます。
事故のあと、ただちに「高次脳機能障害」と診断されることは少ないです。しかし、以下のような診断結果が出た場合には、高次脳機能障害の可能性がありますので、注意が必要です。
- 脳挫傷(のうざしょう)
- び慢性軸策損傷(びまんせいじくさくそんしょう)
- び慢性脳損傷(びまんせいのうそんしょう)
- 急性硬膜外血腫(きゅうせいこうまくがいけっしゅ)
- 急性硬膜下血腫(きゅうせいこうまくかげけつしゅ)
- 外傷性くも膜下出血(がいしょうせいくもまっかしゅっけつ)
- 脳室出血(のうしつしゅっけつ)
高次脳機能障害に関する後遺障害等級は以下のようになっています。ご覧いただいても分かるように、自賠責保険の後遺障害等級表は、症状による分類には具体的な表現がなく、分かりづらいです。そこで、次項でご紹介する労災保険の高次脳機能障害整理表を参考に決めていくのが一般的です。
高次脳機能障害 後遺障害等級認定の方法
大脳の4つの能力が、どの程度失われたかを判断して決めます。
高次脳機能障害の等級認定は、大脳の4つの能力が、それぞれ6段階の評価で、どの程度喪失したかを判断して決めていきます。
「4つの能力」とは以下です。
- 意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力 等)
- 問題解決能力(理解力、判断力 等)
- 作業負担に対する持続力・持久力
- 社会行動能力(協調性 等)
「6段階の評価」とは以下です。
- A:わずかな喪失(多少の困難はあるが概ね自力で出来る)
- B:多少程度喪失(困難はあるが概ね自力で出来る)
- C:相当程度喪失(困難があり多少の援助が必要)
- D:半分程度喪失(困難はあるが援助があれば出来る)
- E:大部分喪失(困難が著しく大きい)
- F:全部喪失(まったくできない)
上記の基準を、労災保険の「高次脳機能障害整理表」にあてはめ、どの等級に該当するかを判断しています。
以上を基準にして、それぞれの能力がどの程度喪失しているかを当てはめ、等級を決めます。
高次脳機能障害 損害賠償請求には時効がある?!
事故発生日または症状固定日より3年とされています。
高次脳機能障害は、すぐに症状があらわれるものではないので、ある程度期間がすぎないと後遺障害の診断ができない場合や、被害者に自覚がないまま日々が過ぎ、社会に出てはじめて、自分が高次脳機能障害だとわかる場合があります。
また高次脳機能障害は、最近までそれ自体が広く認知されていなかったこともあり、医者が症状を見落としたまま症状固定とされてしまう場合もあります。
示談をした後、症状固定した後、また事故からかなりの時間が経過してから、高次脳機能障害があきらかになった場合などは、法律上の解釈が非常に難しくなります。裁判でも、損害賠償請求の時効についは、数多く争われています。
時効については解釈の難しい部分はありますが、高次脳機能障害で損害賠償請求をするなら、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。
高次脳機能障害 等級認定は慎重かつ正確に!
適切な等級認定を受けることが重要です。
等級認定は、賠償額を決めるためのすべての基準になりますので、慎重で正確な作業をする必要があります。
後遺障害等級の認定は、事故の相手の保険会社がかわりに申請手続きをするのが一般的です。しかしここで注意しなければならないのは、相手の保険会社にまかせっきりにしてしまっては損をする可能性があるということ。
相手の保険会社にとっては、より高い等級が認められれば、支払う賠償金の額が高くなってしまいます。ハッキリ言ってしまえば、等級は低いほど良いのです。そのため、相手の保険会社は、必要最低限の資料のみで申請をしようとします。このようなやり方で、すべてのケースで適切な等級が受けられるとは言い難いのではないでしょうか。